

あらすじ
祖母の介護休職に入って八ヶ月。深夜の台所で湯気の立つコンビニ白米を前に、立ち尽くす日々が続いていた。ある夜、壁越しに包丁の音が響く。挨拶もろくにしていない隣人の男から差し出された一杯の出汁が、忘れていた喉の渇きを思い出させる。鍋を返しに行った夜、彼の台所の椅子に座り、私は初めて「疲れた」と言わずに済む場所を見つける。出汁の引き方を教わり、祖母にお粥を炊いた朝、初めて私自身に向けられた言葉が返ってくる。湯気の向こう、二つの台所と一枚の壁の物語。


祖母の介護休職に入って八ヶ月。深夜の台所で湯気の立つコンビニ白米を前に、立ち尽くす日々が続いていた。ある夜、壁越しに包丁の音が響く。挨拶もろくにしていない隣人の男から差し出された一杯の出汁が、忘れていた喉の渇きを思い出させる。鍋を返しに行った夜、彼の台所の椅子に座り、私は初めて「疲れた」と言わずに済む場所を見つける。出汁の引き方を教わり、祖母にお粥を炊いた朝、初めて私自身に向けられた言葉が返ってくる。湯気の向こう、二つの台所と一枚の壁の物語。